凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「なあカルロス。ここだけの話だが……そなたも二十歳となったのだから、そろそろ妻を娶っても良い頃合いだな。相手がいないのであれば、うちの末娘なんてどうだ?」
彼にとって禁句のようなひと言が国王から飛び出し、エリオットは心の中で「やばい」と呟き、心なしか口元を引き攣らせる。
カルロスは小さく息を吐き出しながらゆっくりと顔をあげ、国王を真っ直ぐ見つめる。
「国王陛下。今のお言葉は命令でございますか?」
冷ややかな面持ちでカルロスから問われ、国王は意表を突かれたかのように目を丸くする。普通に考えて、王女を娶れるとなれば名誉である。国王の息がかかったことで、騎士団での立場も飛躍的に上昇し、すぐに複数の部隊をまとめあげる立場に就くことになるだろう。
いずれは副団長へ、そしてカルロスのようにさまざまな魔法を習得し、剣術も圧倒的に優れているとなれば、間違いなく騎士団長の座まで手に入れられる。
誰しも地位や名誉は欲しいもので、自分の話に目を輝かせて食いついてくるかと思っていたのに、カルロスは例外だった。
国王は瞬きを数回繰り返した後、豪快に笑い出す。
「命令ではないゆえ安心しろ。アリスティアには諦めろとだけ伝えておこう。それで本人が諦めるかは知らぬが」
国王が大らかな人柄で良かったと安堵したエリオットが肩の力を抜き、カルロスは感情の読み取れぬ表情のまま、再び国王に対し首を垂れた。
「そう言えば、アリスティアはカルロスのことを色々調べたらしく恋人は居ないようだと言っていたが、実際はどうなのだ?」
「いません」