凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 日が傾き、薄暗い影を落とし始めた中を、規則正しい足音を響かせながらふたりは一気に進んでいく。城の正門を抜けると、賑やかな街並みに視線を向けることなく騎士団の詰め所へ向かった。
 カルロスの若く美しい容姿と、三十五歳の落ち着いた大人の雰囲気を存分に漂わせているエリオットに、女性たちの視線が一気に集まっていく。しかし、そんなものに気を取られることなく、エリオットが口を開いた。

「そう言えば、カルロスが想い続けている……ああ間違えた。子供の頃に会い、それから探し続けている娘は見つかったか?」
「……いいえ。それと別に探していません」

 カルロスは前だけを見つめたまま、短く返事をする。それにエリオットはニヤリと笑って、さらに続けた。

「そう言えば、先日の王妃の誕生日パーティーで、カルロスがらしくない行動をしていたのを見かけたな……はて、あの娘はどこの誰だっただろうか」

 そこでカルロスは思わず足を止めた。らしくない行動には心当たりがある。命の危険があったわけでも、警護対象の女性だったわけでもなく、触れる必要のない女性の腕を、気がついたら掴んでいた。

(怯えさせてしまったように感じて、ただそれだけで体が動いた。自分でも理解できない行動を、よりによってこの男に見られていたのか)

 とてつもなく苦々しい気持ちになりながら、カルロスはじろりとエリオットを見た。
 カルロスの反応がエリオットには面白く、笑みを深めた。しかし、カルロスが相手の女性に関して一切口を開こうとしないため、痺れを切らしたように切り出す。

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