凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
 エリオットの考えに、カルロスは確かにと頷く。
 あのような出会いと別れをしたため、ルーリアのことはずっと気にしていた。
 しかし、彼女がお嬢様と呼ばれていたこともあり、二年後から学ぶ予定となっていた貴族の子息や令嬢が通うアカデミーで顔を合わすことになるだろうと思った。
 だから、探すなどといった行動を特に起こそうとしなかったのだが……五年もあった在学期間、一度も彼女の姿を目にすることはなかった。
 もっと早い段階で彼女が誰かを探っておけば良かったと後悔に近い感情を覚えたところで、カルロスはこれ以上の深入りはやめておけと自制したのだった。

「そうかもしれません……でも、俺たちには関係ないこと。今日のところはこれで失礼します」

 カルロスはしっかりと「俺たち」を強調させてから、「え、帰るの?」というエリオットの言葉を背中に受けながら、門からほど近い場所にある厩舎へ向かってひとり歩き出した。
 厩舎の中で休んでいた愛馬を連れて再び詰め所の門を歩いて通る。敷地の外に出るとすぐにカルロスは愛馬に跨り、風を切って走り出した。

(彼女が生きていて良かったが、今も呼び寄せ体質は変わっていないらしい)

 王妃の誕生日パーティーで再会したルーリアと、記憶の中にいる幼いルーリアを思い浮かべると、自然とカルロスの脳裏に出会った時の出来事がつい昨日のことのように鮮やかに蘇ってくる。




 ルーリアと出会ったのは十年前、カルロスがまだ十歳だった時のこと。
 その日カルロスは、ちょうど今と同じように夕陽に満ち溢れた街中を、屋敷に帰るべく馬を走らせていた。
 屋敷のそばにある美しい庭園に差し掛かった時、違和感を覚えてすぐさま馬を制した。
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