凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
思わずカルロスがちらりと肩越しに後ろを確認すると、恐怖と困惑が入り混じった、はちみつ色の目と視線が繋がった。
次の瞬間、一気に自分へと近づいてきた黒精霊たちにルーリアが「ひっ」と小さく悲鳴を上げると、カルロスは眉間に力を込め、力強く地面を蹴った。
ひとりで六体を相手にするだけなら、難なく黒精霊を鎮められただろう。しかし、標的にされているルーリアを守りながらの戦いに、カルロスは苦戦を強いられることとなる。
途中で二体ほど増えたため焦りはしたものの、なんとか魔力の核を断ち斬って、黒精霊たちを殲滅させることに成功する。
ひと段落ついたところで、ようやくカルロスはルーリアと向き合った。質素なドレスを着ていて、肌は透き通るかのように白く、痩せている。どこかの侍女見習いかと考えるものの、とても綺麗な顔をしていて品も感じられるため、ちぐはぐな印象が否めない。
「……ごめんなさい。私のせいで手を怪我させてしまって」
言われて、手の甲に薄く血が滲んでいることに、カルロスは気が付いた。
「こんなの怪我のうちに入らない」
「でも……ごめんなさい」
何度も頭を下げるルーリアの肩や手が震えているのを目にし、思わずカルロスはルーリアの肩に触れる。彼女のひどい怯えようを見ていられなかったのだ。
震えが止まり、驚いた表情へと一気に変わったルーリアと見つめ合ったまま、カルロスはゆるりと首を横に振る。