凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「謝る必要はない。俺が勝手に首を突っ込んだだけだから。それより、そっちこそ怪我してない?」
カルロスからの問いかけに、ルーリアはさらに驚いた様子をみせた後、すぐさまこくこくと頷き返す。
「それなら良いけど……家まで送ってく。どこに住んでるの?」
カルロスはルーリアから手を離し、馬を呼ぶように指笛を吹く。すると、馬がやって来るより先にルーリアの足が一歩二歩と後退していった。
「だっ、大丈夫です! 助けてもらっておいて、そこまでしてもらう訳にはいきませんし、それに……」
言いかけた言葉を慌てて飲み込んだルーリアに対し、カルロスは不思議がるように問いかける。
「それに、何?」
「い、いいえ。なんでもないです。ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」
深々と頭を下げたあとにルーリアが見せた少しばかり不慣れな、それでいてとても綺麗な微笑みに、カルロスは目を奪われた。
その隙をつくように、ルーリアが身を翻してぱたぱたと走り出すと、カルロスは我にかえるようにハッとし、不満げに前髪をかきあげる。
「こっちは恩を売るつもりなんてまったくないんだけど……そもそもどこの誰なんだよ……でもまあそれなら、後で恩を返してもらうために、名前くらい聞いておくか」