凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
ふと浮かんだ考えにカルロスはニヤリと笑う。ルーリアを追いかけることに決めて、自分の隣にやって来た馬の手綱に手を掛けた時、「お嬢様!」と女の叫ぶ声が遠くで響いた。
カルロスはすぐに振り返ると、庭園を抜けたその先に、ルーリアと侍女らしき女性の姿を見つける。
(やっぱり貴族の子どもだったか)
侍女と合流したのなら家まで送り届ける必要はなく、今あの場に割って入っていけば、それこそ恩を売る行為でしかない。カルロスは少しだけ背伸びをしつつ馬のたてがみを撫で、「俺たちも帰るか」と声をかけた。
しかし、再び後ろから聞こえてきた声に、改めて振り返ることとなる。
「言うことを聞かず勝手なことをして! 腹立たしいったらありゃしない!」
「ごめんなさい! 伯母様、ごめんなさい!」
いつの間にかルーリアの傍らには女性がもうひとり増えていた。その女性がルーリアの伯母だということは分かったが、彼女のひどく怯えた様子から関係性に違和感を覚えた。
侍女から何かを話しかけられ、伯母は少し顔色を変えて辺りを見回した後、ルーリアの腕を手荒に掴み、近くに停まっている馬車に向かって引っ張るようにして進んでいく。
その乱暴な様子にカルロスは見ていられなくなり、馬の手綱を手放して一気に走り出した。ルーリアが押し込まれる形で馬車に乗り込んだ瞬間、馬車へと近づいていく黒精霊の姿が三体ほど視界に映り込み、それを目にした人々の悲鳴が上がる。