凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
黒精霊は馬車を、と言うよりもその中にいるルーリアだけを見つけているかのようにカルロスには思えた。
(黒精霊の狙いは彼女のみ)
改めてそう強く思い、カルロスは再び剣を抜いて黒精霊へと向かっていった。その一方で、ルーリアや伯母たちを乗せた馬車は、素早くその場から姿を消したのだった。
結局、誰かは分からずじまいだったが、伯母にぞんざいに扱われていた小さな姿はカルロスの意識に残り続け、十年の月日を経てようやくその正体に辿り着いた。
(……縁談を持ちかけたのはルイス・ギードリッヒか。確かギードリッヒは水の家系だったな)
馬を走らせている時は無心になれることが多いのだが、エリオットの話が繰り返し思い出され、カルロスの心をざわつかせる。
(ルイスはアカデミーの成績は目立って良かったわけじゃない。今も騎士団で剣術を磨いているならまだしも商人の家系だ。黒精霊を呼び寄せる特異体質の彼女を守り抜けるのか?)
そこまで考えて、カルロスは自分自身に苦々しさを覚えた。