凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
その頃にはすでにもうルーリアはこの小屋でひとりで生活をさせられていた。黒精霊から祝福を受けた自分は普通の人と同じように暮らせないとわかってはいたが、まだ七歳であり、両親が恋しくて泣いてしまうことが多かった。
その日、寂しさが堪えきれなくなってしまい、ルーリアはこっそり小屋を飛び出してしまったのだ。裏庭の木をよじ登って塀を飛び越えた後、記憶を頼りに両親のいる家へと歩き始めた。
しかし、家に行ったのは数える程度しかなく、その全てが伯父夫婦と馬車に乗ってだったこともあり、道が合っているかどうかの不安と、体力の無さから、ルーリアは途中で歩けなくなってしまったのだ。
そこがカルロスとの出会いの場となったあの庭園だった。
彼は黒精霊を呼び寄せてしまったルーリアを助け、「家に送る」とまで言った。これまで助けてくれたり、味方してくれたりする人などいなかったため、ルーリアはすっかり戸惑ってしまった。
もちろん、家に送ってもらったところを伯父夫婦に見つかりでもしたら、優しい彼まで怒られてしまうと考え、ルーリアはすぐさまカルロスの元を離れたのだったが、それは正解だった。
その後すぐにクロエラに見つかり、小屋に連れ戻された。
「万が一、お前が黒精霊から祝福を受けたことが知られたら、光の魔力の名門であるバスカイル家の名が地に落ち、魔法薬が売れなくなる。虹の乙女となったアメリアの足も引っ張ることになるんだぞ! わかっているのか!」
そう繰り返し伯父夫婦に怒鳴られ続け、ルーリアは泣きながら謝り続けた。
怒号は、恐怖と怯えで萎縮したルーリアの力が暴走しかけ、戸口のランタンの中にあった魔法石が砕け散ったところで終わった。
泣き疲れてぐったりとしているルーリアを小屋に残し、伯父夫婦は外へ出た。その直後、ランタンを取り外しながらぽつりと発せられたディベルのひと言に、ルーリアは思わず悲鳴をあげそうになる。