凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「再び逃げ出すようなら、もしくは力の暴走を止められなくなった時は……消すしかないな」
命を消される恐怖に震え上がったが、すぐさま「大丈夫。まだ大丈夫」と小声で自分自身に言い聞かせ落ち着こうとした。
そこから、ルーリアはどれだけ両親が恋しくなっても、勝手に小屋を出ようとは思わなくなり、感情を露わにすることも無くなっていった。
先日クロエラが発した「最後」というひと言と、ここ最近しっかり魔力を抑えきれていないことから、自分はこのままでは消されてしまうのではとルーリアは不安になっていた。
(みんなの迷惑になるなら、いっそ私なんて……)
冷静な面持ちのまま床を照らす冷たい月明かりをぼんやり見つめていると、戸口の向こうでカタリと音が鳴った。
「……起きていたか」
物音に続いて聞こえた囁き声に、ルーリアがびくりと体を震わせて顔を向けると、灰色の外套を着たアズターがランタン片手に小屋の中に入ってきた。
こんな夜遅くの突然の父親の来訪にルーリアが「お父様?」と思わず声を上げると、アズターが慌てて唇の前に人差し指をかざし、静かにするように要求する。
「お願いだ。何も言わずこれを羽織って、父さんについてきてくれ」
言いながら渡されたのはアズターが着ている物と同じ色の外套で、ルーリアは戸惑いの眼差しを返す。
「……これはいったいどういうことですか?」
アズターは外套を握りしめたまま羽織ろうともしないルーリアと真剣な表情で向き合った。