凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「この前も言ったが、ルーリアを嫁に出すことに決めた」
ルーリアはわずかに目を見開いた後、怖がるように首を横に振る。
「伯父様と伯母様は、私を嫁になど出さないとおっしゃっていました」
「兄さんたちに許可はもらっていない。これは俺が勝手に決めたことだ。行こう、ルーリア」
「行けません。黒精霊から祝福を受けている私を嫁にもらった男性は不幸にしかならない。その家族にだって迷惑がかかる」
「大丈夫。話がついている。彼ならルーリアを任せられる」
アズターの口調から相手に信頼を置いているのが伝わってきて、ルーリアは思わず口を閉じた。
(相手はルイス・ギードリッヒ様? それとも……)
自分に縁談を持ちかけてきたルイスだけでなく、自然とカルロスの顔も思い浮かべてしまい、ルーリアは慌てて想像をかき消した。
とにかく、アズターがどれだけ本気だったとしても、ルーリアには簡単に頷けない理由があり、勇気を振り絞ってそれを言葉にした。
「私、ここから勝手に出たら……消されます」
ルーリアから声を震わせての告白を聞いても、アズターの神妙な表情は崩れなかった。ランタンを床に置き、ルーリアの右手を握り締めると、固い声音で言葉を返す。
「ここに残っても同じことだ。兄さんたちはそうすべく計画を立て始めた」
恐れていたことが現実になろうとしていたことに、ルーリアは息をのみ、右手で口を覆う。
「守ってやれなくてすまなかった。俺たちはもっと早く覚悟を決めるべきだった。お前にはここから出て、少しでも長く生きてほしい」