凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 ルーリアは寝静まっている街並みに目を向けていたが、少しばかり続いた無言を打ち破るようにぽつりぽつりと話し出す。

「お父様もお母様も、私が居なくなってしまったら、伯父様たちにひどく怒られてしまいますよね」

 先ほど「またね」と言われたことで、自分がいなくなった後のことにようやくルーリアは気が回り、本当にこのまま行ってしまって良いのかと複雑な気持ちになっていた。

「気にするな。俺たちの覚悟はすでに出来ている。家を出ることになっても、後悔などしない。俺たちは兄さんたちに抗い続ける」

 両親が伯父たちから理不尽な扱いを受けてしまうかもしれないと想像し、それでも、アメリアは伯父たちに大切にされ続けるだろうとも予想する。
 アメリアの顔を思い浮かべると、唇の傷がちくりと疼いた気がして、無意識に傷口に触れる。そして肝心の嫁ぎ先を確認していなかったことに気づいて、慌てて質問を投げかけた。

「あの、お父様、聞いていなかったのですが……」

 カルロスとの出会いの場であるあの庭園が目の前に現れ、ルーリアは思わず言葉を途切らせた。

(あの場所で間違いない。思い出のこの綺麗なお庭をまた見ることができるだなんて、嘘みたい)

 いつかまたこの場所に来たいと思っていた。それは美しい風景を改めて眺めたいという気持ちもあったが、ここに来ればまたカルロスに会えるような気がしていたからだ。
 さすがにこんな夜更けに彼はいないだろうが、それでも記憶の中にいる幼い彼には会えたような気持ちになり、嬉しくて心が温かくなる。

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