凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
黒精霊の目はいつも通り、ルーリアだけを見ている。
自分が囮になればアズターは逃げられると考え、ルーリアが訴えかけたその時、黒精霊たちの動きがぴたりと止まった。
不思議に思い目を瞠ると、黒精霊たちは怯えた様子を見せ始め、一体、また一体と逃げ惑い出す。
代わりに馬の足音が近づいてきて、やがてルーリアの前にひとりの男性が姿を現す。
「……カルロス様」
馬に乗ったその男性は間違いなくカルロスで、ルーリアは思わずその名を口にする。
カルロスにじろりと睨みつけられ、黒精霊たちはあっという間に夜の闇に紛れ込むように姿を消した。
(まさかカルロス様に会えるなんて)
驚きと嬉しさが入り混じり、ルーリアはそわそわと落ち着かないでいると、アズターが馬から降り、カルロスに頭を下げた。
「ルーリア、降りるんだ」
続けて、アズターからそう求められ、ルーリアがきょとんとしながらも、言われるがままにまずはランタンを手渡し、それからアズターに支えてもらって馬を降りた。
カルロスも軽やかに馬から降りると、ルーリアの前まで進み出る。
「迎えに来た」
「え?」
真っ直ぐ自分を見つめて伝えられた言葉の意味をルーリアはすぐに飲み込めない。瞬きを繰り返してから隣にいるアズターを見上げて「え?」と疑問を投げた。
まったく理解できない様子のルーリアを、カルロスは呆れ顔で見下ろす。