凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「なんだよその反応は。何も聞いていないのか?」
「すまない。来る途中で詳しく話そうと思っていたのだが、周囲に気を張っていたらすっかり抜けてしまった」

 ついでにアズターにも呆れた目線を送った後、カルロスは短く息を吐き出しつつ、ルーリアへ視線を戻す。

「まあいいか。俺がお前の夫になる男だ。不満はあるだろうが、我慢しろ」

 ルーリアはすぐさま首を横に振る。ルイスの元に連れて行かれるだろうと予想していたため驚きはあるが不満など少しもない。むしろ、カルロスのように素敵な男性に娶ってもらって良いのかと、申し訳なさを覚えてしまうほど。
 そこでルーリアは唇の傷のことを思い出し、恐る恐る確認する。

「もしかして、カルロス様は私に結婚の申し込みを?」
「申し込みではなく、嫁に貰うという宣言だったら送りつけた。こうして父親とは話をしているのだから、他の誰かの許可など必要ない」

 ようやくアメリアが怒り心頭だった理由がわかり腑に落ちると同時に、ルーリアは癖のように口角の傷に触れる。
 カルロスはルーリアのその仕草から、庭園の方へと視線を移動させ、眉根を寄せる。

「黒精霊がさらに集まってきてるな」

 彼の指摘にルーリアは怯えた顔を庭園に向ける。先ほど取り囲んできた黒精霊たちが距離を置いてこちらを窺っているのはなんとなく気づいていたが、確かに、その数が増えているように感じられた。
 ランタンの魔法石による結界などではすぐに打ち破られているだろう。黒精霊が近寄って来ないのは闇の魔力を斬れるほどの力を持つカルロスを恐れているからで間違いない。

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