凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「本当にあなたはすごい人だ。どうかルーリアをお願いします」
アズターは感服するかのようにそう告げると、外套の下から筒状に丸められた紙を取り出し、カルロスに差し出す。
受け取ったカルロスは留めてある紐をほどき、紙を広げた。
書面にさっと目を通すと、ためらうことなく、紙の上で文字を書き付けているかのように指先を動かす。カルロスは小さく頷いた後、その紙をルーリアに渡す。
ルーリアは抱え持っていたランタンを地面に置いて、思ったよりも厚みがあり、しっとりとした重さが感じられる紙を緊張気味に受け取る。
「魔法で署名を」とカルロスから求められ、紙面に視線を落とした。
上部に「婚姻契約書」と書かれてあり、それに続いてつらつらと契約における文言が並んでいる。その下に記入欄がふたつあり、きらきらと輝いているカルロスの名前の隣に自分も記名すればいいのだと理解する。
そして一番下に認め人の欄があり、ルーリアが書き込むべき欄の下にはすでにアズターの名前が書かれてあった。
魔法での署名などやったことがないルーリアは戸惑うものの、カルロスがしていたように人差し指を署名欄へと近づけてみると、そこに温かさが生じて多くの光が舞い始める。
初めての経験にルーリアは目を大きく見開いた後、指先を動かして自分の名前をそこに書き連ねると、指先から魔力を吸い取られていく。
(魔法薬を作っている時の感覚に似ている)
そんな印象をルーリアが持った時、アズターがたじろぐ様子を見せた。ルーリアの魔力に反応するように、隠れていた黒精霊たちが一歩前に出てきたからだ。