凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

「老いぼれ精霊に対してそのように敬意を示してくれるなんて、なんて素敵な女性だ。それに比べてカルロス坊ちゃんときたら、付き合いの長いこの儂を雑な紹介で済ませおった……で、こちらの女性、名は何という。どこの出身だ」

 打って変わって、セレットはカルロスを嘆かわしげに見やったあと、ルーリアのことを詳しく教えて欲しそうに催促する。

「彼女はルーリア・バスカイル。俺の結婚相手だ」
「そうか結婚相手……おい、そんな相手がいたのなら、もっと早く紹介しろ」
「今、紹介したんだからそれで良いだろう。さっさと納得して受け入れろ」

 冷たく言い放ったカルロスに、もちろんセレットは納得などせず、「良くないだろう。そもそも言い方からして納得出来ん」とぶつぶつ文句を言い始める。
 セレットはルーリアへと何気なく視線を戻したが、何か引っ掛かりを覚えたように目を細めた。あまりにもじっと見つめてくるため、ルーリアが居心地の悪さを覚えて体を小さくさせた時、セレットが再び口を開いた。

「家族など作らないとずっと言っていたのに、どういう風の吹き回しかと思っていたが……なるほど、お嬢ちゃんは訳ありか。娶ったというより、引き取ったといったところか。難儀な男だ」

 はっきりと明言しなかったが、黒精霊から祝福を受けていることを今の一瞬で見抜かれたのだと気づき、ルーリアは顔を強張らせた。
 そこで、カルロスは自分のことをどこまで知っているのか、もしかして何も聞かされずに婚姻話を了承してしまったのではと恐くなり、ルーリアはカルロスを見上げた。
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