凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
彼女の唖然とする表情の下に嫌悪感が渦巻いているのではと思っての発言だったが、ルーリアはカルロスに対して恐れ多い様子で首を横に振る。
「いいえ。家具は新品みたいに綺麗だし、ブランケットはとってもふわふわで柔らかくて破れたり汚れてもいないし、窓からは隙間風だって入ってこないし。こんなに素敵なお部屋を使わせていただけるなんて、ありがとうございます」
ベッドに歩み寄って掛け布団に触れつつ部屋の中を見回したルーリアはどことなく嬉しそうで、言葉に嘘はないことが伝わってくる。
「俺の配慮が足りないばかりに気を使わせてしまってすまない。近いうちに買い換えると約束する」
令嬢らしからぬ発言にカルロスは苦笑いを浮かべつつ、窓の向こうの明るくなり始めている夜空へと目を向けた。
「話は後にしようか。少し休んだ方がいい。俺は隣の部屋にいるから何かあったら声をかけてくれ」
ルーリアは頷くと、ずっと抱え持っていたランタンをテーブルの上に置き、羽織っていた外套を脱いで両腕で抱え持った。
カルロスはランタンの中で輝いている魔法石をじっと見つめて、そしてルーリアの様子にもちらりと目をやってから、「おやすみ」とだけ呟いて部屋を出て行った。
部屋にひとりになり、改めて室内を見回すと、ようやくあの小屋から飛び出したのだという実感が湧いてきて、思い出したように疲労感に襲われる。
ポールハンガーに外套を掛けると、再びランタンを抱え持ち、そのままベッドの上に腰掛けた。扉の開閉音に続いて、隣の部屋から微かな物音も聞こえてきて、カルロスの気配に耳を澄ませながらルーリアは視線を俯かせる。