凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜
「多ければ多いほど良いだろう……確か外の物置小屋にもあったはず」
ぽつりと呟いた後、とある作業を始めた。二階廊下を行ったり来たりしたあと、カルロスは一階に降りて、外へと出た。物置小屋からも、目的の物をあるだけ引っ張り出し、すべて居間へと運ぶ。各部屋や廊下など経た後、居間に戻って作業の手を動かしていると、背後から呆れた声で話しかけられた。
「カルロス坊ちゃん。おはようございます」
ゆるりと振り返ったカルロスの目には、彼が幼い頃からジークローヴ家に仕え、五十代となったばかりの侍女のエリンが映り込む。
「おはよう、エリン。そっちこそ早いな」
「ええ。いつもはもう少し寝ているのですが、物音に起こされてしまいまして」
遠回しにうるさいと言われてカルロスは遠い目をし、「それは災難だな」のひと言で片付けた。
「朝早くからいったい何をされているのですか?」
「彼女にとって生活する上で必要なことだ」
曖昧な返答を聞いて、エリンはわずかに顔を顰めた。
「夜更けにどこかに出かけられましたね。まさか、その彼女とやらを連れ帰ってきたなんて言わないでくださいね」
「その通りだ。俺の隣の部屋で寝てる」
さらりと事実を述べるとエリンが右手で頭を抱えて大きくため息を吐いたため、カルロスは呆れたように続ける。
「言ったはずだ。近いうちに嫁をもらうと」
「はいはい、確かに聞きました。しかも相手はあのバスカイル家の娘だとも。あの家の者たちは光の魔力の優秀さ以上に高慢さが目立ちます。私も何度嫌な思いをさせられたことか」
「……それは否定しないが、違う者もいる」
「でも坊ちゃん。町で噂を小耳に挟みましたが、虹の乙女としてチヤホヤされてきたからか、とっても我がままな性格をされているらしいじゃないですか」
遠慮なく自分の考えを並べていくエリンの後ろから「こら、エリン」と嗜めるように低い声がかけられた。
ふたりの元に歩み寄ってきたのは、エリンの旦那である五十代後半の大柄の男、レイモンドだった。