凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 気を取り直すようにエリンが注文をつけると、カルロスは「了解した」と呟き、話はこれで終わりだとばかりに再び作業を始めた。
 エリンはその姿を物言いたげに見つめていると、レイモンドから腕を軽く引かれ、小さくため息をつく。そのままふたりはカルロスに背を向け歩き出すが、やはり黙っていられなかったようで、エリンはぶつぶつと独り言を言い始めた。

「真夜中に花嫁を迎える時点で、そういうことだと察するべきでした。そもそも、坊ちゃんにはずっと気に掛けているお相手がいらっしゃいますものね。その方が見つかれば最良でしたのに。本当に上手くいきませんね」

 それを耳にしたカルロスは、作業の手を止め、肩越しにエリンたちを振り返る。そのお相手はまさにルーリアその人であると告げようとしたが、それを報告する義務はないと思い直して口を閉じた。
 居間にひとりとなり作業に集中していると、廊下でエリンが驚きの声を上げたのが聞こえてくる。

「まあ、ここにも魔法石が……あそこにも! まるで聖域ね。バスカイル家の娘さんはここまでしないと暮らしていけないのかしら。変わっているわ」

 遠ざかる足音と共に、理解できない様子のエリンにレイモンドが「エリン、やめなさい」と再び注意する声が続き、それらを聞いていたカルロスが「まあそんなものだ」と認めるように小声で独りごちた。

「外にもいくつか設置しておきたいが、これだけでは心許ないな。レイモンドに購入しておくように頼んでおくか」

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