凍てつく乙女と死神公爵の不器用な結婚 〜初恋からはじめませんか?〜

 テーブルの上にはランタンと魔法石がふたつずつ置かれてある。今カルロスが向き合っているランタンの中には魔法石があり、光り輝いて存在感を示していた。
 ランタンと魔法石を抱え持って外に出て、屋敷正面と裏門の二箇所にそれぞれランタンを設置すれば、ひとまず今できることは終了となる。
 カルロスは屋敷の中に戻ると、炊事場でエリンが食事を作っている気配を感じながら廊下を進み、一階の奥にある書斎へと足を運んだ。
 そこから精霊に関する書籍をいくつかかき集めると、それを抱えて二階の自室へと戻った。文机の上にそれらを置くと、カルロスは椅子に腰掛け、一番上の本を手に取った。

(果たして俺の欲しい情報はあるだろうか)

 屋敷にある本はひと通り目を通してあり、その中で、精霊のことについて書かれていたと記憶しているものを持ってきたのだ。ぱらぱらとページを捲り、二冊目、三冊目へと手を伸ばした後、カルロスはため息をついた。
 精霊に関して記載はあっても、「人と同じ見た目をし体が小さい」とか「大地と光の魔法を得意とする者が多い」や「臆病で人が近づくと姿を隠す」など、誰もが知っている基本的な情報しか載っていない。
 ましてや黒精霊に関しては「闇の魔力を扱う。姿を見かけても刺激を与えてはならない」のみ。
 本を閉じて四冊目に手を伸ばした時、机上の五角柱の小さな箱の中からかたりと音が鳴り、カルロスは目だけそちらに向けた。
 箱の側面は一部がガラスで中が見えるようになっていて、そこには昨晩カルロスが真っ二つに割ったルーリアの髪飾りの魔法石が入っている。
 それがわずかに動いていて、尚且つカルロスの目にはまだ石の中で闇の魔力が蠢いているのが見えた。
 その動きがまるでルーリアを探しているかのようで、カルロスは「鬱陶しいな」と忌々しげに呟く。ふと気になったように隣の部屋へと目を向けたあと、本をぱたりと閉じて椅子から立ち上がる。

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