イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
「えっと、大佐。今日は私の結婚相手候補と引き合わせてくれるとのことですが…」

 まさかと思いながら、彼女は大佐に自分が今日ここへ来た目的について切り出した。

「僕がそうです」

「え?」

 大佐より先にラファエルが名乗り出た。

 禿げでも太っていても、年上でもいいと思っていたが、ラファエルはそのどれにも当てはまらない。

 それどころか、見かけだけなら、かなりの好条件の相手だ。

「そういうことだ。君の条件も承知していて、彼から立候補してきた」

「私ではご不満ですか?」

 アニエスの戸惑いに、ラファエルが寂しそうに見つめてくる。出会った頃から、彼はよくアニエスにこんな表情を見せていた。

 まるで褒めてもらうのを期待している犬のようだ。
 
「ふ、不満とか…その、ディルクは名ばかりの当主でいいの?」

「僕はお飾りでいいです。先輩が手助けがほしいというなら、協力はしますが、領地運営に興味はありません」

「お飾りって…それであなたはいいの?」

「僕は既婚者という肩書きがあればいいんです。それで群がる女性の何割かは防げるので」

「女性除け」

「ジョルジュが最近婚約したばかりなのですが、その女性が…」

 ジョルジュは彼の異母兄だ。

 それだけで、何となく事情は飲み込めた。

 恐らくはその女性がラファエルに言い寄ってきているのだろう。

 そうなると、ただでさえ彼にいい感情を持っていない彼の義母や異母兄が、黙っていないだろう。

「家に居づらくなって、今は宿住まいをしています。でも、そこでも女性従業員が勝手に僕の部屋に押し掛けてきたり、私物を盗まれたりして、この前は数人がかちあって大騒ぎになりました」

「そ、そう。それは大変ね」

「モテるのも考え物だな」
 
 大佐と二人で、同情の目を向けた。
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