イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
◇◇◇◇

「う…ん、えっ」

 アニエスは身動ぎしようとして、体が言うことをきかないことに気づいて、はっと目を覚ました。

「え、ちょっ、な、何これ」

 気付けば見慣れない部屋で寝台に寝かされ、お前に薄い絹一枚だけの姿で腕は後ろ手に縛られ、足も布で拘束されていた。少し手足に痺れもある。

「い、一体…」

 何が起こったのかと記憶を思い起こす。

「確か…家でお茶を飲んでいて…」

 寝る前のいつもの薬草茶を口にして、眠りについたところまでは覚えている。

 しかし、ここは自分の部屋ではない。蝋燭が灯された部屋は窓に鉄格子が嵌められ、鎧戸が下ろされている。

 首を巡らせば、まるで牢屋のような堅牢な鉄の扉が見える。

「な…ど、どうして…」

 寝ている間に、賊が押し寄せ拉致でもされたのか。
 でも、金銭目的の強盗や、暗殺の類なら殺すかその場で拘束すればいいことだ。

 それとも、身代金狙いの誘拐か。

 しかしベルフ家は健全な運営を行っているが、貴族階級の中では中流で、大金持ちと言う程ではない。狙うなら大商人のほうが確実だ。

 それにこの痺れと、ここまでされて気が付かなかったところを見ると、一服盛られたのは間違いない。
 
「まさか。家人に手引きした者がいる? ラファエル…皆はどうなったのかしら」

 同じ邸にいたラファエルや使用人たちの安否が気になるか、この状態では確かめようもない。

ガチャ

 必死で状況について考えていると、扉の鍵が外される音がした。

ー一体誰が…

 そう思って身構えた。

「え、ラ、ラファエル?」

 部屋に入ってきたのはラファエルだった。

「ああ、気がついたのですね」

 四肢を拘束され驚いているアニエスを見ても、彼は驚きもせずニコリと微笑んだ。

 この状況を少しも異常だと思っていないようだった。

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