イケメン妻はお飾りの年下夫の愛に囚われる
 優しい彼女は、僕が女性問題で苦労していると言えば、心配してくれた。

 苦労しているのは本当だった。

 特にジョルジュの婚約者は、酷いものだった。

 僕が何も言っていないのに、あなたの気持ちはわかる。ジョルジュと結婚しても、心はあなたのものだとか、わけのわからないことを言ってきた。

 彼女を避けるため家を出たが、そこも安心は出来なかった。

 宿の従業員が不必要に部屋を訪れ、何度も宿を変えたが、状況は変わらなかった。

 しかもこの前は、ジョルジュの婚約者が部屋の前にいるのを見た。

 既のところで、宿屋の主人が助けてくれなければ、逃げ切れなかっただろう。


 しかし、最終的にアニエスは僕との結婚を承諾してくれた。
 思わず踊り出しくなるほどに、心が高揚した。
 
 彼女はこれまで、僕のことを騎士団の後輩程度にしか思っていなかったかも知れない。

 アニエスが僕を選んだ理由は、他に選択肢がなかったからかも知れない。

 時間の余裕もなかっただろう。

 それでも、彼女は僕を選んだ。

 大事なのは、それだけだ。

 お飾りの当主で構わない。彼女の夫になれるなら、肩書など何だっていい。

 ほしいのは、彼女の夫としての立場だけ。

 
 僕は彼女の「夫」という立場を手に入れた。

 
 初めての夜。

 彼女も初めてだったが、僕も初めてだった。

 僕が生まれてからも、父は何度も母を訪ねてきた。

 そして幼い僕の見ている前で、母を犯した。

 アニエスへの気持ちを自覚する前は、はっきり言って、男女が裸で触れ合い、男がその欲望の高まりを女に押し付ける行為の、何がいいのかわからなかった。

 幼い頃見た父が嫌がる母を手籠にする姿は、醜悪だった。  

 僕の寝台に勝手に上がり込んできた女たちに、無理矢理体を弄られた時は、嫌悪しか感じなかった。

 だから、もしかしたら、自分は一生出来ないかも知れないと思っていた。

 でも彼女が他の誰かのものになるのは、許せなかった。
 
 アニエスが、僕以外の男と、している姿は見たくなかった。

 彼女は僕のもの。
 
 そして僕は彼女のものだ。

 
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