海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜
「─…もしかして、あの時の…?」
思い当たる節が凪砂にもあったのか、私に説明を求めるような顔の凪砂に、ゆっくりと話しかける。
「凪砂はあまり覚えてないかもしれないけど、別れるって話をした二週間前くらいに、凪砂…夜中にいきなり私の部屋に来てさぁ〜・・・」
その後のことを凪砂に告げると、凪砂は悲しそうな顔をする。
「覚えてるっ・・・晴輝の奥さんに会ったのはその日だ・・・どうしても萩花に会いたくて、萩花を見て安心したくて、、夜中に会いに行ったのをちゃんと覚えてる。」
「っえ・・・覚えてるのっ?!そのっ・・何したのかも?」
「飲めねぇのに酒飲んだせいで、所々飛んでるところはあるけど・・・何も聞かないお前に甘えて一晩中抱いたことは覚えてる。」
まさか、凪砂が覚えていたなんて思わなくて、あの日のことを思い出して少し切なくなる。
嘘つきの凪砂を辞めると言ってくれた今なら、、"あのこと"について聞いてもいいだろうか?
「あ、あの・・・その時凪砂、寝言で色々言ってたけど。さすがにそれは分からないよねっ?!寝てる時に言ったことなんて、分かんない・・・よね?」
─…ゆうか
確かに凪砂は泣きながら目を閉じて、優香の名前を口にした。私を好きだと言ってくれる凪砂のことは信じたいけれど…この事があるからどうも信じきれない部分があった。
凪砂は一瞬考える素振りをして、ハッと何か思い出したような顔つきに変わる。
「─…あの夜夢を見た、優香の夢。ただジッと俺の事を見てる優香に、、そっちに逝った晴輝のことを頼むって、必死に頼み込んだ覚えがあるから・・・今でもなんとなく覚えてる。」
─…あぁ、そういうことだったんだ
その瞬間、長い間のしかかっていた物から解放されたような気がした。少し震えている凪砂の様子から、それが嘘ではないことが分かる。
──…もういいや
凪砂と私はお互い思い合っていて、瀬凪は紛れもない凪砂の子どもだ。それだけで十分だ。それ以上なにも求めるようなものはない。
「萩花・・・悪かったっ・・・あの朝お前が何も無かったみたいに接してきたから、その気遣いに甘えて俺も忘れたフリをして部屋を出たんだ。」
凪砂が父親だと話せば、てっきり喜んでくれるかと思ったけど、どうやら酷く責任を感じてしまっているらしく、その表情は未だ沈んでいる。