海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜
その日のことは、今でも鮮明に覚えている。
仕事を休んでからは動くことが減るから、少しでも身体を動かしておこうと毎日、朝散歩するのが日課になっていた。
朝から何となく腰が痛くて生理痛のような鈍い痛みがあったものの、まさかそれが陣痛の前触れだとは思わずに、逆に動いた方が良いかと思ってその日も散歩に出かけていた。
その出先、公園の近くを歩いていた時に味わったことの無い・・・例えるならめちゃくちゃ激しい生理痛のような猛烈な痛みに襲われて、堪らず座り込んでしまった。
時間が朝だったため、近くを歩いていた女子高生2人が私の異変に気が付き駆け寄ってきてくれて。彼女たちがタクシーを呼んでくれたのをよく覚えている。
それからはもう地獄のような時間で、痛みが一定の間隔でやってきて、、よくテレビで見るような出産絵図ではなく、、
「──…死ぬっ、マジで死ぬっ!!もう無理っ・・・お腹切って、お願ぃいいっ!」
っと、本気でお腹を切って取り出してくれと思うほど辛くて、吐いたり、叫んだりで・・・思っていたものと全然違う辛さに、本気で死ぬと思った。
その苦しみは13時間続き、意識がハッキリとしたのは、、誕生した我が子の可愛い産声が聞こえた時だった。
その瞬間に、それまでの痛みや苦しみはまるで無かったかのように、一気に高揚感に包まれる。
産まれたばかりの我が子を、助産師さんがそっと私の胸の上に乗せてくれる。
「おめでとうございますっ!!元気な男の子ですっ!!ママ、本当に頑張ったね!」
またドラマのようなセリフが聞こえてきたけど、私にはそれに応えるような余裕はなくて、、
たった今出てきたばかりで目がハッキリ開いていない、小さな我が子を見て、ブワッと涙が溢れ出す。
「なず・・・凪砂っ・・・」
─……ねぇ凪砂、私頑張ったよっ
めちゃくちゃ頑張った、多分人生で一番頑張ったよ。
「なずっ・・・なっ・・・会いたいよ・・・」
凪砂に、会いたいっ・・・会って抱きしめてギュッてして、頑張ったな…って頭を撫でて欲しい。
小さな赤ちゃんの頭にそっと触れる。
「キミも頑張ったね、生まれて来てくれてありがとうっ・・・名前はね、実はもう決めてるの。キミの名前は、、」
───瀬凪《せな》
男の子でも女の子でも、この名前を付けようと思っていた。