海が凪いだら迎えに来てね〜元カレ海上保安官に極秘出産が見つかるまでの軌跡〜
案内されたところには、先程避難していた方とは違い、見た目に分かるほど負傷を負っている人ばかりが集まっていた。
頭上にはヘリが一機飛んでいて、ロープのようなもので吊り上げて救助している様子が見える。
凪砂は潜水士で船の上にいる事だけは知っていたから、この後私がヘリで救助されるとなった今、もう凪砂に出くわす確率はゼロになった。
「─…すみませんっ、この親子を先にお願いしますっ!」
私を案内してくれた彼が、先にいる救助隊の人に声を掛けると、その場にいた人たちが一斉にこちらを振り返るので少し怯んだ。
─…もしかして、順番抜かししたみたいになってる?!
一刻も早くこの船から出たい気持ちはみんな同じなのだろう。
突然やってきた私が、優先されることにきっと不満がある人ばかりなのだと悟る。
ヘリの下でロープを持っていた別の救助隊の人は、先程まで私を案内してくれていた彼とは少し違う素材のような救助服を来ていたけど、色味はほとんど同じオレンジベースで背中には【 海上保安庁⠀】の文字がしっかりと刻まれている。
私の顔面を見て一瞬目を見開いたその人は、すぐに私に駆け寄って来て、どこから持ってきたのか分からないタオルのようなものをおでこにグッと押し当ててくる。
「血が止まってない状態で、今まで何してたんですか?あなた、死にますよ?」
──っえ、それあなたが言いますっ?!
人命救助が仕事ですっ!みたいなイメージの人にそんな暴言に近いことを言われてムカついたけど、この人に言われて初めて、血が止まっていなかったことを知る。