双子パパは今日も最愛の手を緩めない~再会したパイロットに全力で甘やかされています~
 それもそのはず、フェリーチェでの売れ筋ベネチアングラスは一万円から三万円くらいのグラスだ。五万円を越えるものはめったに売れない。今日のように客の入りが悪い日は、まさに救いの神の出現だもの、晴美さんが笑顔になるのは当然だ。

 しかも彼が購入したのは、私が一番気に入っていたグラスである。客が見知らぬ誰かだったなら、私だって素直にガッツポーズをしていたに違いない、

 でも、お客様は彼……。とてもじゃないが私は喜べない。

 買い物を終えた彼は、私のいるカウンターに向かって歩いてくる。

 グレーのタートルネックのセーターに黒っぽいパンツ。濃紺のチェスターコートをラフに羽織っていて。

 なにを着ても憎らしいほど似合う。

 パイロットの制服姿が一番素敵なのは言うまでもないが。

「いらっしゃいませ」

 ひとまず、他人行儀に挨拶をする。

「購入してくださったんですね」

「気に入ったグラスがあったんでね」

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