お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 明日から、本格的に学園生活が始まるのね。
楽しみだわ。
たくさんお友達を作って、たくさん勉強して、たくさん思い出を作りましょう。

 ────と意気込んだのも束の間、入学三日目にして校舎裏へ呼び出される。
それも、初日に助け起こしたあの女子生徒────改め、特待生のルーシーさんに。
最初は『何事か』と身構えていたものの、待っていたのはまさかの転生者というカミングアウト。
なので、こちらも憑依者だということを明かした訳だが……あちらはポカンとしていた。

「あぁ……それで……だから……」

 顎に手を当て考え込むルーシーさんは、下を向いてブツブツと呟く。
難しい顔つきで一度ギュッと目を瞑ると、勢いよく顔を上げた。
かと思えば、こちらに向き直る。
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