お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『友人だからこそ、苦しみも分かち合いたい』と考え、私は真っ直ぐ前を見据える。

「世界を救うとか、そんな大それたことが私に出来るとは思えませんが、少しでも助けになるなら喜んで協力します。ただ……」

 そこで一度言葉を切ると、私は苦笑にも似た表情を浮かべた。

「……お兄様方が納得してくれるか、ちょっと不安ですけど」

 一番の難関とも言える兄達の説得に、私は小さく肩を落とす。
難航するのは、目に見えているから。

 やっぱり、内緒でこっそり協力するしかないかしら?
でも、いつも傍に寄り添ってくれたお兄様や勘の鋭いリエート卿、そして私をよく見ているレーヴェン殿下を欺ける自信はあまりないわ。
正直、直ぐにバレそう……。

 三人から尋問を受ける様子を想像し、私は『どうしよう?』と悩んだ。
────と、ここでルーシーさんが自信ありげな笑みを零す。

「三人の説得は、私に任せて!絶対、納得させてみせるから!」

 『大船に乗ったつもりでいなさい!』と啖呵を切り、ルーシーさんは顎を逸らした。
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