お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
「それで、ターゲットに変わった点はありませんでしたか?」

 出来るだけ冷静に話を切り出すルーシーさんは、桜色の瞳に期待を滲ませた。
が、レーヴェン殿下は小さく首を横に振る。

「なかったよ。一時間ごとに千里眼(・・・)で居場所を確認していたけど、至って普通だったかな」

 ────千里眼。
それはギフトの一種で、どんなに遠くに居る物や者も視認出来る能力。
ただし、自分の魔力でマーキングしたものしか視れないため対象に直接魔力を込めるか、もしくは自分の魔力が籠った何かを渡さないといけない。

 なので、今回私達はターゲット(対象)の小物……もっと正確に言うと、メガネを拝借した。
レーヴェン殿下の魔力を込めるために。
正直あまり気は進まなかったが、『後で返すんだから』と自分を納得させて実行した。
誰かを監視する上で、レーヴェン殿下のギフト以上に適したものはないため。
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