お人好しの悪役令嬢は悪役になりきれない
 『お前も同罪だ!』と目をつり上げる兄は、リエート卿を蹴り飛ばす。
そして、私を抱き込んだ。

「とにかく、リディアに寄るな!触れるな!話し掛けるな!」

「お、お兄様……お二人とも悪気はないんですし、そこまで怒らなくても……」

「ダメだ!こいつらは甘やかしたら甘やかした分だけ、付け上がる!」

 疑問形ですらない物言いで、兄は二人の本質を決めつけた。
『いいか?あいつらはケダモノだ!』と力説する彼の傍で、リエート卿とレーヴェン殿下は視線を逸らす。
あまりにも酷い言われように傷ついているのか、それとも図星なのか……二人とも、反論はしなかった。

 まあ、今のお兄様には何を言っても火に油だものね。
黙って聞き流すのが、一番かもしれないわ。

 などと考えていると────ルーシーさんが、パンッと手を叩いた。
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