契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
「はい」
《あ、澪花? ごめん、お願いがあって》
どこか慌てたような様子の姉。電話の向こうは賑やかな様子がうかがえる。
「どうしたの?」
《お願い! 忘れ物してきちゃったのに今気づいて》
「忘れ物⁉」
《入れたと思ってたメイクポーチ、忘れてきてて》
嫌な予感がする。そう思った矢先、向こうから《お願い!》と必死な声が聞こえた。
《会場まで届けてくれない?》
「えぇ? メイクポーチって、そんなメイク直しするの?」
《するでしょ! リップも塗り直したいし》
「だ、大丈夫だよ。お姉ちゃん十分綺麗だし、直す必要なんて──」
《一生のお願いだから! 待ってるから、渡してあるチケット持って届けにきて》
「えぇ⁉ 本当に言ってるの?」
《そんなに嫌なら届けてくれたらすぐに帰ってもいいから、ね? お礼は必ずするから、お願いね!》
「え、ちょっ」
あっという間に通話は終わり、しんと静かなリビングでひとりきり息をつく。
「届けてって、本当に……?」
リビングの時計に目を向けると、時刻は十九時十五分を指している。
キッチンに戻り、冷蔵庫から出した食材を元あった場所に戻した。