契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】


「いいな、旦那様とお花見デート」


 ぼんやりと窓の外を眺めていると、いつの間にかとなりに姉が立っていた。

 見せた笑顔が引き攣る。


「今日行かないと、もう散っちゃうだろうから」

「そうだね、もう満開だったもんね。楽しんできな」

「うん」


 帰ってきたら、蓮斗さんと別れることになったと話さなくてはならない。

 まさか、お花見に行ったその日にそんな報告を受けるなんて、誰も思いもしない。

 お母さんも、お姉ちゃんも、きっと驚くだろうな……。

 約束の時間三十分前となり、少し早めだけど家を出る。

 ゆっくり歩いて行けば、約束の場所には十分ほど前に到着するだろう。

 春の日差しが優しく降り注ぐ。時折、気持ちいい風が髪を揺らしていく。

 一歩一歩、待ち合わせの場所に足を進めながら、不意に頭の中に蘇るのは蓮斗さんとの今までの思い出。

 行くつもりもなかったクリスマスパーティーでのアクシデント。そこで声をかけてくれた彼のずば抜けた輝きは今でも色褪せない。

 出会って間もない私なんかを気遣い、母の病院へ送り届けてくれたことはありがたかった。

 それが契約結婚のきっかけになって、少しずつふたりの思い出が増えていった。

 緊張した初めての食事、誕生日のサプライズ。

 蓮斗さんが両親の話を打ち明けてくれた夜は、彼への気持ちをはっきりと自覚した忘れられない日になった。

 いろんな瞬間が次々と思い出されて、まるで命が終わる前の走馬灯を見ているようだ。

 でも、蓮斗さんとの時間はもうすぐ終わろうとしている。だから、あながち間違いではない。

< 168 / 199 >

この作品をシェア

pagetop