契約夫婦はここまで、この先は一生溺愛です~エリート御曹司はひたすら愛して逃がさない~【極甘婚シリーズ】
櫻坂を向こうに望みながら、気持ちを落ち着けるように深く深呼吸を繰り返す。
白に近い淡いピンク色の桜並木が真っすぐに続く櫻坂がいよいよ近づいてくると、その始まりに佇むひと際目立つ長身のスーツ姿が目に飛び込んできた。
どきんと、スイッチが入ったように鼓動が音を立てる。
「澪花」
久しぶりに聞く蓮斗さんが私を呼ぶ声。低くしっとりとした声は気持ちが落ち着く。でも、今日は胸を締め付ける切なさも感じる。
「お久しぶりです」
「お久しぶりって、それも変な感じがするが、そうだな、少しぶりだ」
蓮斗さんの手が私の手を取り、当たり前のように繋がれる。「行こう」と手を引かれ、賑わう櫻坂をゆっくりと歩き始めた。
満開を迎えた桜並木は、春の風に花びらを躍らせる。
ふわりふわりと青空に舞い上がる花びらを目で追いながら、話を切り出すタイミングを窺う。
切り出したら、そこで私たちの関係は終わっていく。
それがわかっているから、口を開けない自分がいる。