魔女さんとナイト
 旅人がすぐに立ち上がった。

 かすかに子供の声がする。
 大人から話を聞いてここまでやって来たのだろう。

「……ちょっと、脅かしてきます」
「やめておいた方が」
「いえ。ちょっとだけ、ちょっとだけです」

 しばらく経って、旅人が戻ってきた。

「きっちり言ってやりました。もう二度と来ませんよ」

 そう言って、おどけたように拳をかざす。頭の包帯にはうっすらと血が滲んでいる。

「はあ……」

 もう何と言っていいやらだ。
 割れたガラスを片付けるのも「オレがやります」などと言い出すので、丁重にお断りした。
 
< 7 / 11 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop