別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「おとうしゃん、まだー?」

 少しばかり飽きてきた凌空がその場にしゃがみ込んだので、慌てて抱き上げた。子どもの集中力としては、そろそろ限界だ。

「も、もしかしたら違う滑走路だったのかも。お母さん、間違えちゃった」

 凌空に説明しながら、自分に言い聞かせている。

「あ、ひこうき!」

 再度、凌空が空を指さした。滑走路に近付いていたRHH社の飛行機を視界に捉え、安堵する。どうやらなにかの事情で遅れていただけらしい。

 え?

 ところが、すぐに違和感を抱く。飛行機は高度を下げて滑走路に入ったものの一定の高さを保ったまま着陸はせず、そのまま再び上空へ戻ったのだ。

 なに、どういうことなの?

 予想外の動きに混乱する。

「ね、今の着陸するんじゃなかったの?」

「あんなに低く飛んだのにまた浮上?」

 おかしいと思ったのは私だけではないらしい。展望台にいた他の人々も首を傾げる。

 空に舞い上がった飛行機を目で追うが、すぐに旋回していった。

 言い知れぬ不安に駆られ、凌空をギュッと抱きしめてこの後どうすべきなのかを考える。

 ここでおとなしく待っておくべき? それとも誰かスタッフに聞く?

 情報が欲しいと判断した私は、凌空を連れて展望デッキから離発着のフライトスケジュールが表示されているところへ向かう。

 やっぱり綾人の乗っている飛行機は到着になっていない。それどころか、この後の飛行機の搭乗口や時間の変更などが行われ、場は騒然となっていた。
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