別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
　その中でＲＨＨの制服を着たスタッフの女性を見つけ、声をかける。

「あ、あの。十三時十分着の五九八便ってまだ到着しないんですか？」

「申し訳ございません。諸事情で到着が遅れているようです。今しばらくお待ちいただけますか？」

　そう言われると、なにも返せない。ひとまず展望デッキに戻ると、さらに騒がしくなっていて皆、滑走路に釘づけだった。

「なにかあったんですか？」

　先ほども展望台にいた年配の夫婦に声をかける。

「それが、さっきの飛行機がまた滑走路に入ってきたけれど、結局着陸しないまままた飛んで行ったのよ。あの飛行機に娘が乗っているの。どうなっているのかしら……」

「着陸したくても、できないんじゃないか？」

　さっと血の気が引く。やっぱりおかしい。着陸予定時刻からもう三十分以上が経過している。さらに滑走路を見ていると端 に消防車が複数台やってきた。

「しょうぼうしゃ！」

　凌空ははしゃいで身を乗り出して機嫌を取り戻すが、不安は倍増する一方だ。

　なにが起こっているの？　飛行機は……綾人は、大丈夫なの？

「おい。さっきの飛行機、機材トラブルかなにかで前輪が出なくて着陸できないらしい」

　スマホを見ていた男性の声にその場にいた人たちの注目が集まる。私も慌てて自分のスマホを確認すると、インターネットニュースになっていた。

　文面だけの内容を読んでいると、テレビカメラを持ったマスコミクルーが現れ、てきぱきと中継の準備を始める。さらには滑走路の端に集まる消防関係者の車両も増えてきた。

　緊迫した雰囲気の中、再び飛行機が滑走路に近付いてくる。言われるまでまったく気付かなかったが、確かに報道されているように飛行機の前輪が出ていない。

　それでも飛行機は滑走路に入ってきて、さっきよりも地面すれすれに飛び、再び宙に浮いた。
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