別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 ◇ ◇ ◇ 

「進藤くん、結婚したんだってね。おめでとう」

 航空管制情報や気象情報を確認し、機長の出社に合わせて挨拶しに行くと、彼は俺の顔を見て開口一番に告げてきた。

「ありがとうございます。相沢(あいざわ)キャプテン」

 相沢俊二(しゅんじ)キャプテンは、機長であり副操縦士昇格訓練の教官も務めていて俺自身お世話になった人物だ。パイロットに必要なのは操縦技術だけではなく、視野や気付き、仕草や会話の意識の持ち方など、そういった面の大事さも彼からは教わった。すべては安全に通じるためだ。

「よかった。君は優秀だったけれど、どこか突きつめるところがあったから、寄り添ってくれる伴侶が見つかって。幸せかい?」

「はい。妻と結婚できて幸せです」

 臆面もなく答えると相沢キャプテンが一瞬目を丸くした後、すぐに穏やかな笑みを浮かべた。

「それを聞いて安心したよ。今日のフライトも無事に終えるよう努めよう」

「よろしくお願いします」

 自身の教官とフライトができるのは、緊張もするが感慨深い。今日は国内線で四国往復の予定だ。


 天候や風の影響などをあまり受けず、フライトは順調に進み二便目である復路の便はあっという間に着陸体勢に入る。

「Tower RHH598.leaving7500 for 6000.(RHH五九八便。七千五百フィートから六千フィートへ下降中)」

《RHH598 Fly heading 320.vector to final approach course. descend and maintain 6000(RHH五九八便。三百二十度方向へ飛行してください。最終侵入経路まで誘導します.六千フィート降下、維持してください)》

 管制官と英語でやり取りをしながら、高度を下げ滑走路へアプローチしていく。
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