別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません

　復路は相沢機長がメイン操縦を行うＰＦ(パイロットフライング)を務め、俺が操縦を補佐するＰＭ(パイロットモニタリング)を担う。そしてあと十分ほどで着陸となり、千五百フィートほどでいつも通り車輪を下ろす流れになった。

　内容が伝わっているか確認するため、管制官の指示や操縦に関する動きは復唱して指差しなどを行い互いに了承を示す。相沢機長が車輪を下ろすレバーを下げたが、そこでモニターを見ていた俺はある異変に気付いた。

　計器盤に、正常なら緑色のランプが灯るはずが、一部が赤色とオレンジ色を放っている。

「緑色ランプが点灯していません 。前輪と前輪の扉に異常あり」

　多くの飛行機には後部にふたつの車輪と前方にひとつの車輪があり、バランスを取って着陸する。このままでは安全な着陸はできない。

「前輪が出ていない可能性があります」

　すぐさまギアダウン――車輪を降ろせない旨を管制官に報告する。続けて相沢機長の指示で、空中待機し不具合を探求する許可を要求した。

　上空三千フィート、海上で待機する許可が下り、飛行機は旋回して陸から海の方へ向かう。俺はチェックリストを取り出し、ギアに関する項目をめくっていった。

「対応が早いね。念のためふたりで確認しながら二回ずつ行おう」

「了解」

　フライト・シミュレーターや実機訓練などで、あらゆる不測の事態を想定した訓練を受けているが、やはり現実に起こると緊張が走る。けれどそれを顔に出すわけにはいかない。