別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「可南子、凌空」

「綾人」

 目を丸くしている綾人に凌空を抱えたまま近付く。肩章のついた制服姿の綾人を見るのは、ここで再会して以来だ。

 なにか、なにか言わないと。けれど、どれも声にならない。その前に視界がじわりと滲み、涙がこぼれる。

「ふっ……」

 熱いものが頰を伝って、息ができない。

「心配かけたな。悪かった」

 小さく首を横に振る。すると綾人は私を軽く抱き寄せた。

 回された腕の感触や温もりに、綾人が無事だったと改めて実感する。続けて彼の手が私の頭にそっと乗せられた。

「大丈夫、大丈夫だから」

 いつもと変わらない安心させる声や表情。さっきは凌空がこうして気持ちを落ち着かせてくれた。

 ああ、やっぱり、綾人は凌空の父親なんだ。

「おとうしゃん!」

 そこで私に抱っこされていた凌空が綾人に手を伸ばす。

「凌空も来てくれたのか。随分と待たせたな」

「りく、まってたーー」

 凌空の明るい声になんだか噴き出しそうになった。

「無事でよかった。すごかったね、お疲れさま」

 やっと彼に伝えられた。

「ああ。ありがとう、待っていてくれて」

 綾人は微笑みながら返してくれた。

「進藤くんの奥さんかな?」

 その時、声をかけてきたのは機長さんだった。綾人と同じ制服を着ているが、肩章の線が四本あり、穏やかで物腰が柔らかい雰囲気だ。慌てて頭を下げ挨拶をする。
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