別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 凌空と手を洗ったあと、着替えやプールで使ったタオルなどを洗濯機に放り込み、いつもの調子で荷物を片づけていく。

「ほら、凌空。おやつの前にお薬塗ろう」

「はい!」

 相変わらず返事だけはいい。飲み薬なら断固として拒否されるところだ。服をまくり上げ、病院でもらった塗り薬を発疹のあるところに塗っていく。

「おかあしゃん、きょうりく、プールでバッシャーンした。なかなかった」

「えー。すごいね! 頑張ったんだ」

「うん!」

 前は顔に水がかかっては嫌がって泣いていたのに、こうしたちょっとしたことで成長を感じる。

 薬を塗り終わった凌空をぎゅっと抱きしめた。そこで我に返る。今日は来客がいるのだ。

 綾人に声をかけようと彼の方に顔を向けたら、ふと視線が交わる。彼は座らずに立った状態で、穏やかな表情をしてこちらを見ていた。

「改めて可南子が母親をしているのを見ると、不思議な感じだな」

「そ、そうだね。あ、飲み物なにがいい?」

 照れというより気まずさで、すぐに話題の矛先を変えた。

 凌空と一緒にいて、綾人に自分が父親だと知られたら困る。私自身が招いたとはいえこの状況は想定外だ。

 でも凌空がいるから逆に綾人は長居しないだろう。私が仕事を持ち帰っているのも知っているし、彼だって貴重な休みの日をこれ以上私たちに使っている場合ではないはずだ。

 そう思っていたのに――。
< 35 / 189 >

この作品をシェア

pagetop