別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「これ、ひこーき」

「正確には大型ジェット旅客機だな。こっちは大型プロペラ旅客機」

 なんでこんな状況になってしまっているのか。

 動画編集が一息つき、ヘッドホンを外す。さっきから引き戸一枚を隔てて隣の部屋にいる綾人と凌空が気になって気が気ではなかった。

 保育園でおやつを食べ損なった凌空のため、彼には牛乳とビスケットを用意し、綾人は私と同じでいいと言うのでアイスティーともらいもののクッキーを出した。凌空が先に食べ終わり満足したところで、席を離れる。

『可南子、凌空がいるのに仕事できるのか?』

『うん。まぁ、正直厳しいけどね。凌空が寝たときとか夜とかにまとめてなんとかするよ!』

 大変さをアピールするつもりはないが、こう言えば彼ももう帰ると言うだろう。これで偶然が重なった綾人との関係ももう終わりだ。

 ところが、続けて彼はまったく予想もしていなかった提案をしてきた。

『俺が凌空を見ていようか?』

 もちろん全力で遠慮したし断った。凌空が大人の男の人に慣れていないとか、あれこれ理由をつけて拒否したが、綾人は譲らなかった。

『おかあさん。えほん、よんでー』

 そうこうしているうちに凌空がお気に入りの図鑑を持ってきて読んで欲しいとせがみだす。

『お母さん、お仕事だから俺が読んでもいいかな?』

『いいよー』

 そう言ってさっさと凌空が綾人を隣の部屋に手を引いて連れていってしまったのだ。
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