別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 ああ、もう。こんなとき凌空の人懐っこさが憎たらしい。

 凌空、父親について余計なこと言わないかな?

 子ども部屋兼寝室として使っている部屋には凌空の大好きな飛行機のおもちゃや図鑑がたくさんある。

 心配でそわそわしたものの、それで時間を潰すわけにはいかない。なんとか気持ちを切り替え、仕事に向き合う。飲み物のおかわりも用意しておいたし、凌空はトイレも自分で言えるので大丈夫だろう。

 いつもなら家で仕事をしていたら凌空に声をかけられたり中断したりすることが多いけれど比較的集中して作業を進められた。

「可南子」

 背後から肩を叩かれ、ヘッドホンをはずして振り返る。眠っている凌空を抱っこしている綾人が困惑気味に立っていた。

「ごめん、寝ちゃった?」

 慌てて立ち上がり凌空を受け取ろうとする。眠っているのもあってかなり重いはずだ。しかし綾人は凌空を抱っこしたまま尋ねてくる。

「ああ。どうすればいい?」

 ひとまず隣の部屋に布団を敷き、凌空を横たわらせてもらう。バスタオル一枚かけてそっと頭を撫でた。

 エアコンの風が直接当たらないよう調整し、綾人と部屋を出る。

「保育園ではお昼寝の時間だし、眠たかったみたい。相手してくれてありがとう」

 綾人にお礼を告げ向き合う。

「凌空は本当に飛行機が好きなんだな」

 しみじみ呟く彼に、心臓が跳ねた。部屋には飛行機の図鑑やおもちゃなどがたくさんあるから目についたのだろう。
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