別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「もう綾人と会うつもりは」

「凌空に飛行機を見せる約束をしたんだ」

 おずおずと切り出した私の言葉にかぶせ、綾人が言い切る。なんのことなのか。

「今度、飛行機がよく見えるところに案内するよ。俺の仕事のシフトを送るから、休みの日で行けそうなところをまた教えてくれ」

 一方的に話を進めていく綾人を慌てて制する。

「そんな勝手な約束……困るよ」

「困るって? 俺と凌空が会うのが? それとも可南子が俺と会うのが?」

 彼の問いかけにとっさに答えられない。正確にはどちらもだ。もう綾人には関わらない方がいい。

「嫌なら、凌空に約束を守れずに悪かったって伝えてくれないか。楽しみにさせたから」

 どこか申し訳なさそうな声に、言葉に詰まる。凌空が飛行機を好きなのは私が一番よくわかっている。私がそうさせた部分も大きい。

 この前も飛行機に乗る約束をしたのに仕方がないとはいえ破ってしまった。

『できない約束ならしないでよ!』

 自分の子どもの頃の記憶がよみがえって、胸が苦しくなった。

「凌空と約束したなら、ちゃんと守ってあげて」

 小さく答える。凌空に自分のような思いはさせたくない。

「でも、今度はこんな勝手な真似しないで」

 精いっぱいの主張をすると、そっと頭を撫でられる。
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