別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません


 サラダを口にすると、オレンジ風味のドレッシングが野菜とよく合う。 美味しい。

 凌空に気を配りつつ綾人をこっそり見る。なにかをしてほしいとは思わない。けれど彼がそばにいるだけで不思議と心が落ちつく。安心できる。

 もう二度と会うことはないと思っていた。てっきり憎まれていると。だからこの状況だけでもう十分だ。

「もういくー」

「うん、いっぱい食べたね」

 食べ終えてお腹が満たされたのもあり、凌空の集中力が切れはじめた。やはりゆっくりとはいかないが、それでも綾人が途中で凌空の相手をしてくれたのもあり、私も食事を終えられた。

 ここは私が支払うと決めていたし宣言もしていたのに、凌空のエプロンを外し子ども用の椅子から下ろしている間に、綾人が先に会計を済ませてしまう。

 あまりにもそつなく済まされていたので、一瞬驚いて凌空と綾人のどちらに意識を向けたらいいのかわからなくなった。

「綾人」

「ほら、行こう。凌空、おいで」

 店を出てから綾人に物申そうとしたが、凌空に呼びかけられ彼はさっと凌空を抱っこした。凌空も朝から一緒にいるからか、なんの抵抗もなく嬉しそうに身を委ねている。

「ひこうきは?」

「今日はもう終わり」

 また飛行機を見るのだと勘違いしている凌空に綾人が優しく答えた。しかしこの後、凌空が駄々をこねるのではないかとつい身構える。

「あら。家族でお出かけ? いいわね」

 その時、ふと入れ違いでカフェに入ろうとしている初老の女性に声をかけられた。平日だから目を引いたのか。その女性に視線を向けた凌空を見て、女性はにこりと微笑む。
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