別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「凌空が途中で寝たらどうするんだ?」

 たしかに大変かもしれないが、ここで折れるわけにはいかない。

「大丈夫だよ。いつもひとりでなんとかしているもの」

 普段はひとりで凌空の面倒を見ている。それが当然で、その覚悟があってシングルマザーの道を選んだのだ。すると綾人は切なそうに顔を歪めた。

「でも今はひとりじゃない。俺がいるんだから頼ってほしい」

 言い終え、綾人は凌空を抱っこしたまま駐車場へ歩を進めだした。彼の発言を受け、反対に私は動けなくなる。

 綾人はわかっていない。頼ってしまったら、そばにいてくれる心地よさを知ってしまったら、なくした時つらくなる。もうあんな思いはしたくないのに。

 けれど凌空のことを考えたら、暑い中電車で帰るより、車で送ってもらう方が負担が少ないだろう。

 迷いつつ私は綾人の後を追った。

 どうやら先ほどの女性の発言を綾人はあまり気に留めていないらしい。大人の男女と子どもが一緒にいたら、家族だと思うのは当然だろう。

 誕生日もごまかして伝えているし、彼が自分の子だと思うわけがない。今日はなし崩しに三人で会ってしまったが、もう次はない。綾人の人生から私はとっくに消えた。綾人にちゃんと伝えないと。

 屋内駐車場に停めていたので、そこまで車の温度は上がっていなかった。綾人はまず凌空をチャイルドシートに乗せ、運転席のドアを開けてエンジンをかける。すぐに自動で吹き出し口から冷たい風が流れ出て、私も彼も車に乗り込んだ。
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