別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
 行きと同じく凌空の隣に座り、半分目が閉じかかっている凌空を見て苦笑する。これは帰るまでに寝てしまうかもしれない。

 綾人はハンドルに手をかける前に、なにやらスマホをチェックしている。一緒にいる時はほぼ触れていなかったのだが、やはり気になるのか、なにか大事な用事なのか。

「綾人、大丈夫?」

 画面をジッと見つめ、動かない彼につい声をかけた。すると綾人は弾かれたように顔を上げる。

「ああ」

 短く返事をし、彼の手はハンドルを握った。ゆっくりと車は動き出し、窓の外に視線を遣りながら、どう伝えるべきなのか思い悩む。

 屋内から屋外へ。眩しさに目を細めつつ凌空を見たら、もうすでに彼の目は閉じていた。まだ完全には眠っていないだろうが、それにしても早すぎる。

「凌空、寝ちゃったみたい」

 綾人の申し出を受け入れたのは正解だったようだ。

「朝から大はしゃぎだったし、疲れたよな」

 労わるような声色に、小さく頷く。

「うん。凌空、すごく楽しそうだった。……あのね、綾人。今日は本当にありがとう。今日だけじゃない。空港で再会してからずっと、私や凌空のことを気にかけてくれて」

 偶然が積み重なって、今日に至るのだから不思議だ。お互い通り過ぎることもできたはずなのに、こんな風に一緒に過ごせるなんて。

「けれどね、私……」

 思い切って今後のことについて続けようとしたが、なにかがおかしい。

「綾人?」

 うしろから運転席に呼びかけるが、すぐに反応はない。

「ああ、どうした?」

 ワンテンポ遅れての返答はいつも通りだったが、なんとなく綾人らしくないと思った。
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