別れてママになったのに、一途な凄腕パイロットは永久溺愛で離してくれません
「ごめん、ちょっと仕事の電話」

 早口で言い切り、凌空を起こさないようにすぐに隣のリビングに移る。

「お疲れさまです、山口です」

 私が担当するクライアントからの急を要する問い合わせについてだった 。大きな問題が起こったわけではなさそうなので、安堵しつつ答えた。

『あとそれから、佐藤さんから連絡があって。山口の作ったプロフィールムービーがすごくよかったから、別件でも頼みたいって』

「本当ですか? わざわざありがとうございます」

 電話を終わらせ、ふと隣室に視線を向ける。綾人がまだこちらに来ていないのは、私が仕事の対応をしていたからなのかもしれない。呼びに行こうかとしたら静かに引き戸が開いた。

「ごめんね、電話終わったから」

「ああ」

 どうも彼の表情は硬い。思えば帰りの車を運転していた時からだ。

「綾人も今日は疲れたよね」

 そんなところに申し訳ないが、彼に話さないと。

「あの」

「可南子」

 私が切り出したのとほぼ同時に名前を呼ばれ、さらには腕を掴まれた。驚きで顔を上げると、切羽詰まった様子の綾人と目が合う。

「本当のことを話してほしい」

「な、なに?」

「凌空は俺の子どもなんだろ?」

 綾人と再会して、彼が凌空と顔を合わせた時から、こんな風に尋ねられるのを考えなかったわけじゃない。

 でもそれは「もしかして俺の子どもの可能性もあるんじゃないか?」とか、もっと曖昧な聞き方だと思っていた。そうやって不安そうに言われたら、笑顔で否定しようと決めていたのに。
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