恋の微熱に溺れて…
コースなので、後何品か料理が出てくる。前菜がとても美味しかったので、この後出てくる料理にも期待値が高まる。

「そうだね。楽しみ…」

まだ前菜の余韻に浸りつつ、ゆっくり食べていると、タイミングを見計らったかのように店員さんが次の料理を運んできた。
次に運ばれてきたのはスープだ。スープも匂いからまろやかな甘さが鼻に伝わってきて、口の中で味を想像し、今すぐにでもスープに口つけたい衝動に駆られる。

「スープも美味しそうだね」

二人して目の前のスープに釘付けだ。もう前菜はとっくの昔のように感じる…。

「はい。美味しそうです」

もういてもたってもいられない。スープに手を伸ばし、口付けた。
口付けた瞬間、あまりの美味しそうに気がついたら飲み干していた。
手が止まらないとはこういうことなのだと、改めて実感した。

「…京香さん、スープめちゃくちゃ美味しいです」

俺の感想を待つ前に、既に京香さんもスープに口付けていた。

「うん。美味しいね。もう美味しすぎて無言になっちゃう…」

お喋りしながら食事をするのも楽しいが、こうやって無言で食事をするのも楽しい。
特に格式高い料理を堪能している時は、雰囲気も相まってどうしたらいいのか分からず、無言になってしまう…。
それも良しと感じてしまうくらい、雰囲気に酔い、流されてしまうのも悪くない。

「そうですね。このままお喋りも気にせずに、料理に夢中になっちゃいましょうか」

「そうだね。そうしよっか」

そのまま料理に夢中になり、無言で料理を食べ続けた。
あまり贅沢はできないが、たまにならこうやって贅沢をするのもアリかもしれないと思った。
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