恋の微熱に溺れて…
「美味しい…。とても飲みやすい」

「京香さんに気に入ってもらえて嬉しいです。食べ物もどうぞ」

目の前には様々な料理が用意されている。これは一晩で食べられる量ではない。どうやら次の日のクリスマスの分も含めて用意してくれたみたいだ。
どれも美味しそうなので食べたいが、さすがに全部は食べられる量ではないので、この中から食べたいものを選んで食べるのが得策であろう。
それに明日には今日食べられなかったものが食べられる。そう思えば慌てる必要はない。
慎重に食べたいものを見極める。まず最初に食べたいと思ったものは…。

「えっと…、それじゃローストビーフが食べたいです」

すると、慧くんがお取り皿の上に装ってくれた。
ちなみに私が食べたいローストビーフは、サラダの上にローストビーフが乗っていたので、サラダも一緒に取り分けてもらった。

「はい、どうぞ」

慧くんは当たり前のように何でもしてくれる。まるで少女漫画の王子様みたいに…。
きっと彼は王子様になるためにこの世に生まれてきたのかもしれない。
…ってこれはさすがに美化し過ぎか。いくら彼氏が好き過ぎるからとはいえども自重しないと。
それぐらい初めてできた彼氏にしてはできすぎた男だ。慧くんを失ったら私はこの先の未来に希望は何もない。
そう断言できるくらいに私にとって彼は大切な存在で。失ってはダメな存在になっていた。

「ありがとう。いただきます…」

サラダと一緒にローストビーフを箸で取り、口元へと運んでいく。

「んー…美味しい」

口の中に入れた瞬間、あまりの柔らかさに感動した。
溶けてなくなってしまうとは、このことか!と実感した。

「俺もローストビーフを食べようかな」

自分の分を箸で掬って、お皿に装い、そしてそのままローストビーフを食べ始めた。
食べ始めた瞬間、一気に表情が美味しさのあまり幸福に満ち溢れている表情になった。

「美味しいですね。これは何度でも食べられる美味しさです」

慧くんの気持ちはよく分かる。大袈裟な表現に感じるかもしれないが、私も同じ気持ちだ。
ローストビーフは今夜でなくなってしまうことが確定した。今すぐにでもおかわりしたいくらいだ。

「分かる。私もおかわりしたい」

「それじゃ二人でおかわりしましょうか。俺がまた取ります」

よく合コンで女性が男性の食べたいものを積極的に取り分ける話を聞いたことがある。
私は合コンに行ったことがないので、実際どういうものなのか知らないが、今目の前でそれをされて嬉しいと思った。
嫌がる人もいるかもしれないが、人は自分に親切にされたら嬉しいものだ。
こんなふうに自然に気を遣える人がモテるんだなと実感した。
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