恋の微熱に溺れて…
「…美味しい」

スープだけでもいいから、おかわりしたい。それぐらいとても美味しいスープだ。

「自分で作っておいていうのもなんですが、本当に美味しいです。いつもより良い出汁と良い味噌を買ったからかもしれません」

慧くんの言う通り、良いものを使えばいつもより良い味にはなるかもしれないが、それ以上に慧くんの料理の腕が上手だから、より美味しい料理が作れたんだと思う。

「それもあると思うけど、慧くんの料理の腕が上手だからだよ」

どんな食材でも、慧くんの料理の腕があれば美味しい料理が作れると、私は信じている。

「京香さんにそう言ってもらえてなによりです。これからも腕に()りをかけて料理させてもらいますね」

今でも充分、彼の料理は美味しい。更に磨きをかけるなんて、本当に彼は素晴らしい人だ。

「私も一緒に頑張りたい。でもそれ以上に慧くんの料理が美味しいから、食べられる喜びもあるんだよね」

食いしん坊と思われたかもしれない。事実なので否定できない…。

「俺もそれは同じ気持ちです。京香さんと一緒に料理をするのも楽しいですが、俺が作った料理を美味しそうに食べる京香さんの顔を見られるのも嬉しいんですよね」

好きな人が自分の幸せそうな姿を見て、幸せだと感じてもらえる。それだけでとても嬉しかった。

「そう言ってもらえて嬉しい。ありがとう。これからも慧くんのご飯、たくさん食べさせてもらうね」

甘えさせてくれる彼に、とことん甘える。美味しい料理に胃袋も心も完全に掴まれている。
普通、胃袋を掴むのは男女逆な気がするが。女性だってこうして胃袋を掴まれることがある。
それぐらい胃袋を掴まれたら、男女関係なしに恋人の料理の腕に虜になってしまうのであった。

「こちらこそ振る舞わせていただきますね」

お正月の朝ならではの美味しい料理を堪能し、出かける前に英気を養えた。

「そろそろ出かけましょうか。準備は大丈夫ですか?」

ちゃんとトイレも行ったし、リップも塗ったので、問題ない。

「大丈夫だよ。出かけられるよ」

「それじゃ行きますか。近場にある神社でも大丈夫ですか?」

神社に拘りがあるわけではないので、私は慧くんさえ良ければそれで構わない。
それにわざわざ人気の神社にまで行くのは人混みが多そうで。できればそれは避けたい。
それなら近所の方がいい。近所の神社だってそれなりに混んでいそうだが、近所ならすぐに帰って来れそうなので、その方が気が楽だ。

「大丈夫だよ。近所の神社に行こう」

私がそう言うと、いつも通り手を繋いで神社まで向かった。
神社に着くと、案の定人が多くて。小さな神社とはいえども、地元住民で溢れ返っていた。
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